もう一ヶ月以上経ってしまったのですが、発売日の7月7日に Ryzen 3900X を購入していました。AMD CPU を最後に購入したのは、どうも自宅サーバー向けの Athlon II X4 605e だったようで、それが2010年でしたから、およそ9年ぶりに AMD CPU を購入したことになります。(デスクトップ用途では Athlon64 X2 の何かを買っていたのですが、多分2008年~2009年くらいの話)
というわけで購入から大分期間も空いてある程度安定していることも確認できましたので、このエントリーでは Ryzen 3900X の常用設定をどのあたりにしようかと探った結果をまとめていきます。
※色々見るのは面倒くさい、という方は、ずずっと下スクロールして「結果」のセクションをご参照ください。
新マシン構成
まず、今回組み上げた新しいマシンの構成としては以下のような感じになります。
コンポーネント名 | 型番 |
---|---|
ケース | Corsair Obsidian Series 250D |
マザーボード | GIGABYTE X570 I AORUS PRO WIFI |
CPU | AMD Ryzen 9 3900X |
CPU クーラー | Corsair H100i PRO RGB |
メモリー | G.Skill F4-3600C19D-32GSXWB |
GPU | ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 SUPER Twin Fan |
M.2 SSD | GIGABYTE GP-ASM2NE6200TTTD |
SATA SSD | Crucial CT2000MX500SSD1/JP ×2 |
SATA HDD | WesternDigital WD40EFRX ×2 |
電源 | SilverStone SST-ST70F-TI |
構成が比較的贅沢な感じになっていますが、元々は2年前くらいに出るはずだった Intel の新プロセス CPU 用にお金を貯めはじめたもので、延期に次ぐ延期により保留状態となっていたものがここで放出されたという形でして、言わば継ぎ足し継ぎ足しの秘伝のタレ的な感じですね。ただし SATA SSD と SATA HDD、それにケースに関しては、元々使っていた物からの流用です。
また GPU は当初予定にはなく、NZXT Kraken G12 を利用して簡易水冷化してあった GTX 1080 を流用する予定だったのですが、載せ替えた後にポンプから強烈な異音が出るようになってしまったこと、Kraken G12 に適用可能な14cmラジエーターの水冷ユニットが今は殆どなく、12cmのものでもポンプが厚くなっていてケースに入らない可能性があったこと、標準搭載のファンも高負荷時に結構な音を出すタイプのものであったこと、SUPER も出たことだしということから、RTX 2070 に更新しました。(上の写真に含まれていないのは、別に購入したからです)
(2019/08/29 追記)購入した CPU の OC 性能を調べてみたところ、当方が入手した個体は 4.1GHz 1.2250V が動作可能な個体でした。これはいわゆる当たりでも外れでもない、OC 性能的には普通、というものになります。もちろん実際には 4.1GHz 1.2250V の設定ではなく、クロックは Auto の設定で常用します。
メモリークロックを決める
ということで、ようやくここからが本題になります。
Ryzen 9 3900X でも利用されている Zen2 アーキテクチャでは、メモリークロックが設定の大きな要素となっていて、そこから CPU の電圧をオフセット指定して調整する、という手段をとられていることが多いのですが、当方でも同じ方法で調整していきます。具体的にはまず常用設定となるメモリークロックを決めて、その後オフセットで調整する、という感じになります。今回比較するメモリークロックは 2133MHz、2600MHz、3200MHz、それにオーバークロック設定となる 3600MHz の4パターンで、メモリーの設定は 3600MHz のみ XMP プロファイルの設定である 1.35V/CL=20、それ以外は 1.20V/CL=Auto(マザーボードによる自動設定、このときの CL 値は CPUID CPU-Z を利用して確認) となっています。
消費電力はシステム全体の消費電力を測定していますが、その測定には RATOC の REX-BTWATTCH1 に、ps_btwattch を組み合わせて利用することで最短1秒単位でのデータを CSV で取得しています。最短、と書いているのは、自宅の環境ではたまに間が抜けることがあるからです。
また CPU 温度は CPUID HWMonitor を利用して確認しました。
なお注意点としては、これらの測定に利用したマザーボード BIOS バージョンは F4d で、これに含まれている AGESA のバージョンは 1.0.0.3AB、AMD Chipset Driver のバージョンは 1.07.07 であることです。AGESA 1.0.0.3ABB と AMD Chipset Driver は 1.07.29 から少し挙動が変わっていることから、現在はもう少しアイドル時の消費電力が低下している可能性があります。Windows 10 のバージョンは 1903 を、電源設定は AMD Ryzen Balanced を使用しています。
メモリークロック | 2133MHz (1.20V) |
2666MHz (1.20V) |
3200MHz (1.20V) |
3600MHz (1.35V) |
---|---|---|---|---|
CL | Auto (15) | Auto (20) | Auto (22) | XMP (20) |
アイドル時消費電力(60秒平均) | 83.22 | 83.52 | 86.01 | 120.10 |
CPU-Z Stress Test 最大消費電力(60秒) | 195.30 | 192.60 | 196.89 | 202.35 |
FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチ平均消費電力 | 295.93 | 302.82 | 311.67 | 324.74 |
CPU-Z Stress Test 最高温度(負荷60秒) | 84℃ | 83℃ | 84℃ | 85℃ |
CINEBENCH R20 Single Thread スコア | 499 | 500 | 486 | 490 |
CINEBENCH R20 Multi Thread スコア | 7014 | 7026 | 6962 | 7019 |
x264 FHD Benchmark fps値 | 63.75 | 63.54 | 64.26 | 63.83 |
FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチスコア | 15437 | 16370 | 17354 | 18255 |
上の表を見てみると、当方が入手した個体では、アイドル時の消費電力が 3600MHz 設定にしたところで大幅に上がっていることが分かります。メモリーの電圧値が 1.35V になっていることが原因なのかと思い、Windows 10 が正常起動した 1.22V まで下げてみましたがアイドルは 110W くらいとそこまで大きく変わらなかったこと、同じ DDR4-3600MHz 設定でベンチマークを取られている 4Gamer.net のレビュー記事でも 100W 越えとなっていることから、おそらく 3900X かあるいは InfinityFabric のオーバークロック設定におけるトレードオフ、ということになるのだと思われます。
メモリーへのアクセス速度が顕著に結果として現れる FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチマークでは DDR4-3600MHz 設定時のスコアがもっとも高くなるものの、アイドル時の消費電力が高すぎるため常用向きではないと言え、加えてそれ以外はそこまで大きく差がないことから、DDR4-3200 を採用することに決定しました。
オフセット値を決めつつ、メモリーの設定をチューニングする
メモリークロックが決まったところで、次はオフセット値を決めます。
オフセット値はマザーボードメーカーによって呼び名が異なるようですが、GIGABYTE の場合は Dynamic Vcore(DVID) と表記されています。Dynamic Vcore を変更するためには、CPU Vcore を Auto から Normal に変更しておく必要があります。例えばオフセット値を -0.1V に設定した場合は、以下のような形になります。
メモリークロック | 3200MHz (1.20V) | |||
---|---|---|---|---|
オフセット値 | 0V | 0V | -0.1V | -0.2V |
CL | 22 | 20 | 20 | 20 |
アイドル時消費電力(60秒平均) | 86.01 | 86.24 | 82.22 | 80.30 |
CPU-Z Stress Test 最大消費電力(60秒) | 196.89 | 198.58 | 176.72 | 153.41 |
FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチ平均消費電力 | 311.67 | 316.17 | 302.26 | 295.39 |
CPU-Z Stress Test 最高温度(負荷60秒) | 84℃ | 84℃ | 76℃ | 68℃ |
CINEBENCH R20 Single Thread スコア | 486 | 499 | 488 | 454 |
CINEBENCH R20 Multi Thread スコア | 6962 | 7032 | 6972 | 6204 |
x264 FHD Benchmark fps値 | 64.26 | 63.78 | 64.84 | 61.83 |
FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチスコア | 17354 | 17683 | 17670 | 17532 |
オフセット -0.2V の時の CPU 温度が70℃を切っているあたりはなかなか強烈なのですが、ベンチマーク値の低下も目立ちます。一方でオフセット -0.1V 設定時はそこまで大きな差異も見受けられないことから、常用設定においては -0.1V を利用することにしました。
結果
最終的に CL 値は 18(CL=18, tRCDRD=20, tRCDWR=20, tRP=20, tRAS=40, tRC=60) に変更しても安定、かつ MemTest86 を3周回しても完走することが分かりましたので、常用設定はメモリークロック 3200MHz、CL=18、オフセット -0.1V で行くことにしました。
最後に、横長になりますがこれまでの結果を一つの表にまとめたものを載せておきます。なお CL18 のときのアイドル消費電力が結構低く出ていますが、これはおそらくたまたまではないかと思われます。
メモリークロック | 2133MHz (1.20V) |
2666MHz (1.20V) |
3200MHz (1.20V) | 3600MHz (1.35V) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オフセット値 | 0V | 0V | 0V | 0V | -0.1V | -0.2V | 0V | |
CL | 15 | 20 | 22 | 20 | 20 | 18 | 20 | 20 |
アイドル時消費電力(60秒平均) | 83.22 | 83.52 | 86.01 | 86.24 | 82.22 | 80.69 | 80.30 | 120.1 |
CPU-Z Stress Test 最大消費電力(60秒) | 195.30 | 192.60 | 196.89 | 198.58 | 176.72 | 176.39 | 153.41 | 202.35 |
FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチ平均消費電力 | 295.93 | 302.82 | 311.67 | 316.17 | 302.26 | 305.16 | 295.39 | 324.74 |
CPU-Z Stress Test 最高温度(負荷60秒) | 84℃ | 83℃ | 84℃ | 84℃ | 76℃ | 76℃ | 68℃ | 85℃ |
CINEBENCH R20 Single Thread スコア | 499 | 500 | 486 | 499 | 488 | 488 | 454 | 490 |
CINEBENCH R20 Multi Thread スコア | 7014 | 7026 | 6962 | 7032 | 6972 | 6987 | 6204 | 7019 |
x264 FHD Benchmark fps値 | 63.75 | 63.54 | 64.26 | 63.78 | 64.84 | 65.12 | 61.83 | 63.83 |
FINAL FANTASY XIV SHADOW BRINGERS ベンチスコア | 15437 | 16370 | 17354 | 17683 | 17670 | 17783 | 17532 | 18255 |
オマケ
AGESA 1.0.0.3ABB と AMD Chipset Driver 1.07.29 で、アイドル時の消費電力が変わったのかを確認してみます。
ただ、これまでのテストではクリーンインストールした直後の Windows 10 1903 にドライバーと各種ベンチマークソフトのみインストールし、インターネットには接続しない状態でテストしていましたが、現在は様々なソフトがインストールされていてインターネットにも繋がっているので、単純な比較はできていません。
測定は同様に60秒の平均消費電力で、結果は 73.26W と、以前測定した際の 80.69W よりも 7W ほど低下していました。導入は自己責任ではありますが、動かないゲームがなくても、AGESA 1.0.0.3ABB と AMD Chipset Driver 1.07.29 を導入しない理由はなさそうです。
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